Q.
出産前、依頼主は分娩台に上がり、分娩監視装置による胎児心拍数モニタリングを受けた。
その時、胎児心拍数の基線細変動は減少しており、基準心拍数はやや頻脈の傾向にあった。
そして、遅発性一過性徐脈が生じていた。依頼主は冷や汗が出て気分が悪くなり、基準心拍数も下がってきていた。依頼主は手術室に移動し、全身麻酔され、帝王切開術で胎児を娩出した。
しかし、胎児は仮死状態で生まれたため、現在も重度の脳性麻痺で植物状態になった。医師は、「子宮内で常位胎盤早期剥離が起きたため、胎児に酸素がいかなくなり心臓が停止した」と説明した。依頼主は医師の説明に納得できず、医師の責任を訴訟によって追及することにした。
A.
常位胎盤早期剥離とは、正常な位置に付着している胎盤が胎児の娩出前にはがれてしまうことである。
常位胎盤早期剥離の一番の原因は妊娠中毒症である(依頼主は妊娠中毒症にかかっていた)。胎児心拍数の基線細変動の減少、遅発性一過性徐脈の連続的生起などは早期剥離の初期として緊急に帝王切開術を行わなければならない。医師はこれを見逃し、漫然と治療を怠っていたため、重度の脳性麻痺に陥らせたものである。裁判者も医師の過失を認め、こちらは8000万円の勝訴的和解をした。
【弁護士よりコメント】
難しい事件であり、当初は有利な条件で和解できるかどうか分からなかった。
しかし、協力医を交えての緻密な分析によって和解ができた。どんな難しそうな事件でも緻密に分析していけば裁判所を説得できるということが言える。